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悪のフレオン

 

b_b03

http://www.plus-ondanka.net/b03_fluorocarbon.htmlより転載)

 


 塩化フッ化炭素化合物(クロロフルオロカーボン、以下CFCと略)の輝きは1974年まで続きました。この年、アトランタで開かれたアメリカ化学会の総会でシャーウッド・ローランドとマリオ・モリナが物議をかもす研究結果を発表しました。二人はCFCの異常な安定性がまったく予期せぬ、そして非常に厄介な問題を起こすことを発見したのです。


 CFCは他の化合物と異なり、ふつうの化学反応では分解しません。もともとの長所であった性質です。空気中に放出されたCFCは、数年、ときには数十年も下層(対流圏)を漂い、やがて成層圏まで上がり、そこで太陽光線によって分解されます。成層圏にはオゾン層と呼ばれる地上50キロから30キロメートル上空に広がる層があります。これをずいぶん厚い層に思えるかもしれません。しかし同じオゾン層を地表の圧力で圧縮したら、わずか数ミリメートルになってしまいます。成層圏の高度では大気圧が非常に低く、オゾン層が薄く広がっているのです。


 オゾンは酸素の同素体です。両者の唯一の違いは、分子を作る酸素原子の数だけです。酸素はO2でオゾンはO3です。しかし二つの分子は非常に異なった性質を示します。オゾン層の上では、強い太陽光線が酸素分子の結合を壊し、二つの酸素原子が生じます。


 これらの酸素原子はオゾン層まで降りてきて、それぞれ酸素分子と酸素原子になります。

 二つ酸素原子は再び結合し酸素分子となります。


 こうしてオゾン層では常にオゾンが作られ、常に壊されています。二つの過程は数千年にわたってバランスが保たれ、その結果、地球の大気中のオゾン濃度も比較的一定になっています。この仕組みは地上の生命にとって重要な意味を持ちます。オゾン層のオゾンは、生き物にとって非常に有害な太陽からの紫外線を吸収してくれるのです。我々はオゾンの傘の下で生きていると言われます。太陽の殺人光線から守ってくれる傘です


 しかしローランドとモリナの研究は、塩素原子がオゾン分子の分解を速めることを示しました。最初のステップは塩素原子とオゾンの衝突で、一酸化塩素(ClO)と酸素分子ができます。

 次にClOが酸素原子と反応して酸素分子ができ、そして再び塩素原子が生じます。


 ローランドとモリナは、この一連の反応がオゾンと酸素分子のバランスを崩すことを示唆しました。なぜなら塩素原子はオゾンの分解を速めますが、オゾンの生成には影響しないからです。最初のステップでオゾンの分解に使われた塩素原子は、次のステップで再生するため、触媒として働いています。すなわち、反応速度を高めるけれども、それ自体は消費されません。これはオゾン層への影響を考えたとき、非常に警戒すべき性質です。つまり単にオゾン分子が塩素と反応するのではなく、一つのCFC分子から離れて上空に行った塩素原子一つは、不活性化するまでに、平均して十万個のオゾン分子を破壊すると言われています。オゾン層が1%減ると、大気を通過する有害紫外線が2%増えるそうです。


 ローランドとモリナは実験結果に基づき、CFCと関連化合物からの塩素原子は、成層圏に達するとオゾン層の破壊を始めるだろうと予言しました。当時CFC分子は、毎日何億何兆と大気に放出されていました。CFCがオゾン層の枯渇、そしてすべての生物の健康、安全性に対し、現実的な、緊急の脅威となっているというニュースは、人々の不安感を煽りました。しかし、CFCが自発的廃止、部分的禁止を経て完全に禁止されるまでには、長い歳月――そして、さらなる研究、報告、特別調査チーム――を必要としました。


 しかし全く予期せぬところからのデータにより、CFCを禁止しようという政治的意思が生まれます。1985年、南極での観測から、極地上空のオゾン層が破壊されつつあることが示されました。いわゆるオゾンホールの最大のものが、事実上無人の大陸の上空で、冬に出現しうることは人々を困惑させました。南極には冷媒もエアロゾルのヘアスプレーもありません。それは、CFCを環境に放出することが、その地域だけではなく地球規模の問題であることを明らかに意味しました。1987年には、南極上空を飛ぶ高高度観測飛行機がオゾン層下部で一酸化塩素ClOを検出しました――ローランドとモリナの予言が実証されたのでした(二人はこの8年後、成層圏と環境に対するCFCの長期的影響を発見したということで、1995年のノーベル化学賞を分け合いました)。


 1987年、モントリオール議定書と呼ばれる条約が採択され、調印したすべての国はCFC使用の段階的中止、最終的には全面的禁止を求められました。今日、冷媒としてはクロロフルオロカーボン(CFC)の代わりにハイドロフルオロカーボン(HFC)とハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)が使われます。前者は塩素を含みません。後者は大気中で簡単に酸化されるため、反応性の低い従来のCFCが到達する成層圏上部まで達することは少ないです。しかしCFCの新しい代替物質は冷媒としての能力に劣り、同じ冷却効果を得るには、多いもので3%余分にエネルギーを必要とします。


 現在、大気中には膨大な数のCFC分子があります。すべての国がモントリオール議定書に調印したわけではありません。また、調印した国であっても、依然としてCFCを含む冷蔵庫が何百万台も使われており、廃棄された古い機器もおそらく何十万台かあって、そこからCFCが大気中に漏れ続けています。漏れたCFCは上昇し、既に存在するCFCの流れに加わります。オゾン層で大破壊を起こす、ゆっくりとした、しかし変えられない流れです。かつて称賛されたこれら分子の影響は、今後数百年にわたって現れるかもしれない。地表に届く高エネルギー紫外線の量が増えれば、細胞やDNA分子が損傷する確率も増す。ガンや突然変異の発生が増えるということです。





 【参考文献】


 

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Author:大村升次郎
私立学校の教師。化学勉強法【フレームワーク式】を運営。『効果的な化学の学習を日本全国に広げる』が夢(^^)/モル濃度計算の問題集を近日Amazonで販売します(^O^)
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