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素晴らしいフレオン~冷やす分子~

 

 理想的な冷媒分子は、現実問題として次のような性質を必要とします。まず、通常の温度範囲で蒸発し、圧縮で液化しないといけません。そして気化するときは大量の熱を吸収しないといけません。アンモニア、エーテル、クロロメタン、二酸化硫黄などはこれらの条件を満たし、良い冷媒です。しかしいずれも分解したり、可燃性であったり、有毒であったり、ひどい臭いがしたりします――中にはこれらの欠点をすべて持つものもありました。


 冷媒の問題はありましたが、冷却装置の需要は業務用、家庭用ともに高まっていった。業務用冷却装置は貿易業者の求めに応じて開発されたもので、家庭用のものより五十年以上進んでいました。最初の家庭用冷蔵庫は1913年に登場し、1920年代には、製氷工場からの氷を入れる、伝統的なアイスボックスに取って代わりました。初期の家庭用冷蔵庫は、音の大きなコンプレッサーが食品とは別になって床に置かれていました。


 有毒で爆発の恐れもある冷媒の問題を解決するため、機械技術者のトマス・ミジリー・ジュニアと化学者のアルバート・ヘンネは、冷却サイクルの決められた温度範囲に沸点を持ちそうな物質を探し始めました。既にミジリーはエンジンのノッキングを防ぐためガソリンに添加する四エチル鉛の開発に成功していました。二人はゼネラルモータースの冷却装置部門で働いていました。この基準に合う物質は、既に使われているか、あるいは実用的でないと却下されたものばかりでした。しかし、可能性があったフッ素化合物のみ調べられていませんでした。フッ素の単体そのものは毒性が強く、腐蝕性の気体です。それまでフッ素を含む有機化合物はほとんど合成されていませんでした。


 ミジリーとヘンネは炭素原子が一つか二つで、その水素原子のいくつかをフッ素か塩素に換えたさまざまな化合物をたくさん作ろうと決心した。こうして合成された塩化フッ化炭素化合物(クロロフルオロカーボン、CFC)は、冷媒として必要な条件を見事なまでにすべて満たした。非常に安定で、不燃性で、毒性はなく、製造コストも低く、ほとんど臭いもありませんでした。


 1930年ジョージア州アトランタで開かれたアメリカ化学会総会で、ミジリーはこの新しい冷媒の安全性を劇的なパフォーマンスで示しました。まず空の容器にCFCの液体を注ぎます。冷媒が沸騰すると彼は蒸気の中に顔を突っ込み、口を開けて大きく息を吸い込みました。そして予め火をつけたろうそくのほうに向いてゆっくりとCFCを吐き出すと、炎は消えました。CFCの不燃性、無毒性を示す、ユニークで見事なデモンストレーションでした。


 その後、多くのCFCの分子が冷媒として使われるようになりました。例えば、二塩化フッ化メタン(通常、フレオン12というデュポン社の商品名で呼ばれた)、三塩化フッ化メタン(フレオン11)、1、2二塩化1、1、2、2―四フッ化エタン(フレオン114)などです。




 【参考文献】


 
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大村升次郎

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