FC2ブログ

冷たく保つ

 

 1877年、フランスのルーアンの港に向けてフリゴリフィーク(冷蔵、冷凍の意味)号がブエノスアイレスを出航しました。積荷はアルゼンチンの牛肉です。今でこそこうした輸送は日常的ですが、これは歴史的な航海でした。船は冷やされた荷物を積んでおり、冷凍の時代の幕開けを告げるものでした。そして、スパイスや塩による食品保存の時代を終わらせるものでした。



 少なくとも紀元前2000年以来、人々はものを冷やすのに氷を使ってきました。これは、個体の氷は溶けて液体になるとき周囲から熱を奪うという原理に基づきます。生じる水は排水口から抜き、新しい氷を追加します。一方、冷凍機の冷却(refrigeration)には、この個体―液体ではなく、液体―気体の相変化が関係します。液体は蒸発するとき周囲から熱を奪います。蒸発で生じた気体は圧縮されることで液体に戻ります。この圧縮過程こそrefrigerationにreという接頭辞がつく理由です。つまり蒸気が液体に戻り、再び蒸発することで冷却するという一連のサイクルが繰り返されます。このサイクルでは、機械的な圧縮装置(コンプレッサー)を動かすエネルギー源が鍵となります。したがって、氷を常に補充しなければならなかったアイスボックスは、厳密に言えばレフリジレーター(冷凍庫の意味)ではありません。


 今日、我々は深くは考えずに、“冷やす”という意味でrefrigerateという単語を使っていますが、厳密には間違いです。本当のレフリジレーターは、冷媒refrigerant――蒸発―圧縮サイクルを引き受ける分子――を必要とします。エーテルを使って冷媒の冷却効果が示されたのは、比較的古く1748年です。しかし、圧縮エーテルの装置が冷蔵庫として使われるのは百年以上後のことでした。すなわち1815年ころジェームズ・ハリソンがオーストラリアの醸造家のためにエーテルを使った蒸気圧縮の冷蔵庫を作りました。彼はスコットランド人でしたが、1837年にオーストラリアに移住していました。この二人は商業的冷蔵庫を最初に作った人々と言えるでしょう。


 フランスのフェルディナン・カレーは1859年、冷媒にアンモニアを使いました。彼もまた冷蔵庫を最初に作った人物というタイトルを請求してよいでしょう。当時はクロロメタンや二酸化硫黄も冷却用分子に使われました。二酸化硫黄は世界初の人工スケートリンクに使われた冷媒です。これらの小さな分子は、食品の保存が塩とスパイスに頼る時代を見事に終わらせました。




 【参考文献】


 

関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


来てくれた人

プロフィール

大村升次郎

Author:大村升次郎
私立学校の教師。化学勉強法【フレームワーク式】を運営。『効果的な化学の学習を日本全国に広げる』が夢(^^)/モル濃度計算の問題集を近日Amazonで販売します(^O^)
>>会員登録  >>サイト >>プロフィール詳細 >>秘密の掲示板

最新記事

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文: